第15回「オメガ3系とオメガ6系はどちらを摂取すれば良いの?」 | オーエム・エックス博士の知恵袋

こんにちは!
いつも弊社のメルマガを読んでいただき、ありがとうございます。
オーエム・エックスの社長の高畑宗明(農学博士)です。

2012年となって初めてのメルマガですね。昨年は皆様にとって、どのような年で
したでしょうか?震災が起こり、原発事故の問題があり、多くの方々が悲しみにし
ずむ年となりました。私どもは、商品をお届けさせていただくにあたり様々な検査
を実施し、日本国内はもとより海外への出荷に関しても、毎日のように発生する
問題に直面しながら過ごしてまいりました。
そのような毎日の中で、多くの人に助けられ、変わらず商品を愛していただける
ことに心から感謝しております。これからも社員一同全ての事柄に真摯に取り組
み、今まで以上に皆様のご期待に応えるために努力して参ります。

さて、前回は「オメガ3」「オメガ6」という脂肪酸について説明いたしました。脂肪
酸の考え方はとても難しいのですが、私たちにとって必須の栄養素ですので、
ぜひ適切に摂取していただきお肌やホルモンの調整に努めていただきたいと思
います。今回は、どちらの脂肪酸を選べば良いのかについて説明し、臨床デー
タも一緒に見ていきましょう。

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 第15回 『オメガ3系とオメガ6系はどちらを摂取すれば良いの?』
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 オメガ3系とオメガ6系はバランスが大切!


前回のまとめを、まず簡単に振り返りましょう。オメガ3系脂肪酸の代表例はα
(アルファ)リノレン酸、EPA、DHAです。αリノレン酸は私たちの体内でもEPA
やDHAに変換されます。一方、オメガ6系脂肪酸はリノール酸を出発物質とし
ています。リノール酸は体内でγ(ガンマ)リノレン酸に変換され、ジホモγリノ
レン酸を経てアラキドン酸に変換されます。

これらの脂肪酸は全て体にとって必ず必要な成分です。「どれかだけが必要な
脂肪酸」ということではありません。よく「オメガ3をたくさん摂りましょう」と言われ
ますが、これは近年の欧米化された食事には、オメガ3系脂肪酸量が不足して
いるために指摘されているのです。オメガ6系脂肪酸も細胞の合成や、病気のリ
スク回避には必須です。つまり良質な油脂をどうやってバランス良く摂取するか
を考えることが大切です。さらには、遺伝的な要因で脂肪酸代謝がうまくいかな
い人も多くいらっしゃいます。では、どうやってオメガ3やオメガ6を摂取すれば
良いのかを見ていきましょう。


 まずオメガ3系脂肪酸の摂取がお薦め!


何よりもまず、お肉などの動物性脂肪を過剰に摂取している方は、その過剰摂
取を控えることから始めましょう。「動物性のものを食べてはいけない!」ということ
ではありません。肉類に含まれるアラキドン酸は、過剰に摂ることで悪玉プロスタ
グランジンが合成され、循環器系の疾患リスクが高まります。しかし、細胞膜の構
成成分でもあるため、適量の摂取は必要です。抗酸化や抗糖化、抗炎症、低血
糖など全てに言えることなのですが、何事も「必要ない」成分はありません。全て
はバランスの上に成り立っていることをご理解いただきたいと思います。

そういった前提の元で、まずお薦めなのはオメガ3系脂肪酸の摂取量を増やす
ことです。それにはαリノレン酸やEPA、DHAの摂取が必要です。オメガ3系
脂肪酸の出発物質であるαリノレン酸は植物に多く含まれます。具体的には、
亜麻仁(あまに)、しそ、ごまなどに高含有に含まれます。またEPAやDHAは、
いわし、サバなどの青魚、サーモンの魚油に含まれます。これまでは、EPAや
DHAは動物性(魚)由来のものしかありませんでしたが、近年アメリカでは海藻
由来のDHAが精製されて販売されているようです。αリノレン酸からも、体内で
EPAやDHAが合成されます。

EPAから合成される善玉プロスタグランジンは、抗炎症作用やホルモン様の働き
をします。血液の流れを改善し、血液の粘度をさげて脳内血管の血栓を防ぎ、
脳内血流のスムースな循環や、過労や加齢による視力の低下を防ぐと言われて
います。その他、オメガ3系脂肪酸が有効とされる疾患には、高血糖、高脂血症、
視神経障害、アレルギー、皮膚障害など数多くの臨床的な報告があります。


 EPA・DHA直接摂取派?それともαリノレン酸摂取派?


EPAやDHAの体内濃度を増やすには、直接魚油由来の成分を摂るのが有効
です。ただし、魚油の精製度が粗い場合には、魚に蓄積した水銀や有害ホルモ
ンなどが混入している可能性もあります。魚油を濃縮したサプリメントを摂取する
際は、その辺りの注意が必要です。また、植物性の油脂を摂取したいとお考えの
方も多いと思います。その際は、αリノレン酸の摂取をお薦めします。

αリノレン酸は、魚などの動物性脂肪を摂りたくない人にとっては大切なオメガ3
系脂肪酸源です。 αリノレン酸を変換する酵素と、リノール酸を変換する酵素
は同じであり、リノール酸過多の生活ではαリノレン酸からの合成経路が阻害さ
れてしまいます。αリノレン酸を積極的に摂取する事で、リノール酸から多量に
代謝されて発生する悪玉プロスタグランジン合成をブロックすることに繋がります。
ただし、αリノレン酸は酸化しやすいことで知られています。また、熱に弱いとい
った指摘をされることもあります。αリノレン酸を選ぶ際には、「低温圧搾方法」に
よって未精製の植物から抽出されているものがお薦めです。また加熱によってト
ランス脂肪酸が生じる危険性もありますので、なおさら熱には注意が必要です。
このように、現代のオメガ6系に傾いている脂肪酸バランスを改善するためには、
αリノレン酸やEPA、DHAといったオメガ3系脂肪酸の摂取が欠かせないので
す。


 γリノレン酸が合成できない人は直接摂取する必要があります!


一方、オメガ6系脂肪酸は必要ないのでしょうか?
もちろん過剰なオメガ6系脂肪酸は減らすべきです。しかし、γリノレン酸の次
に合成されるジホモγリノレン酸は、善玉プロスタグランジンであるプロスタグラ
ンジンE1に変換されます。このプロスタグランジンE1は、抗炎症作用などの働
きをするために必須の役割を果たしています。オメガ6系脂肪酸の中でも、特に
γリノレン酸は特定の人にとっては非常に不足しがちな必須脂肪酸です。その
ために、ある条件の人ではγリノレン酸の積極的な摂取が必要となります。

その「ある条件」とはどういったものでしょうか?オメガ3系脂肪酸を摂取してもア
トピー性皮膚炎などの炎症が解決しない場合、善玉プロスタグランジンE1を作
るジホモγリノレン酸量が体内で不足している可能性があります。これは、リノー
ル酸をγリノレン酸に変換する酵素(デルタ6-デサツラーゼ)が欠損もしくは機
能していないことに起因します。この酵素が働いていない人は、なんと4人に1
人くらいの割合で存在すると言われています。その場合、直接γリノレン酸を補う
事でオメガ6系の善玉プロスタグランジンE1を合成させることが必要です。

γ(ガンマ)リノレン酸を増やすためには、特定の植物から摂取する必要がありま
す。γリノレン酸は、月見草やボラージといった植物に多く含まれることが分かっ
ています。例えば、ボラージ油を用いた臨床研究では、1997年にアトピー性皮
膚炎の症状緩和効果が報告されています。また、1994年には月見草由来のγ
リノレン酸が、月経前に悪化するアトピーや湿疹に対する改善効果があったと報
告されています。このように、特定の方や症状の場合には、オメガ3系よりもオメ
ガ6系油脂のγリノレン酸を直接摂取した方が有効な場合があるのです。

ただし、このデルタ6-デサツラーゼという酵素が働いていない人はαリノレン酸
からの変換も出来ない(前回のメルマガ参照)ため、オメガ3系脂肪酸源として
EPAやDHAの直接的な摂取も必要となります。また、PMS(Premenstrual
Syndrome)で悩んでいる女性にはγリノレン酸量が少ないという報告があります。
こうした女性には直接的なγリノレン酸摂取が推奨されています。

このように、脂肪酸は体にとって必須の栄養素ですが、オメガ3系脂肪酸もしく
はオメガ6系脂肪酸のどちらが自分にとって必要なのかは個人差があります。ま
た、食生活によっても大きく異なります。例えば植物性の食事をメインにされてい
る方は、オメガ6系脂肪酸の摂取量が不足している可能性があります。一方、欧
米化した食生活を送っている方は、まずオメガ3系脂肪酸の摂取をお薦めしま
す。その上で、「オメガ3系を摂っても変わらないな」と感じる方は、実は体内変
換がうまくいかずにオメガ6系が不足しているのかもしれません。どちらのタイプ
の脂肪酸が「あなたに」必要か、ご自身の食生活とまずは相談してみてください
ね!