第43回 『夏で疲れた体に襲ってくる食中毒菌に要注意』| オーエム・エックス博士の知恵袋

こんにちは!
いつも弊社のメルマガを読んでいただき、ありがとうございます。
オーエム・エックスの社長 高畑宗明(農学博士)です。

先日、共同研究先との打ち合わせのため、フランスに訪問しました。その
際に視察として訪問したのが、パリで流行している“BENTO”(弁当)店
の「Neo Bento」です。航空会社で働いていた店主が、来日した際に日本
の弁当に感銘を受けたことがオープンのきっかけだそうです。

和食の影響を受け、大阪や沖縄料理も取り入れた野菜中心のメニュー。弁
当の容器に「メイン」「副菜2種」「デザート」の4カテゴリーを選択す
るのが特徴的です。訪問した際も多くのパリの方々で賑わっていて、日本
の文化が広がっていることが嬉しくなりました。

さて、今回のメルマガは、そんな「食」を楽しむ上で気をつけなければな
らない「食中毒」のお話です。特に夏場で疲れた体に襲ってくる病原菌に
対しては、きちんとした対応が必要となります。予防策や調理方法などを
見直すきっかけにして頂ければと思います。

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 第43回 『夏で疲れた体に襲ってくる食中毒菌に要注意 
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 夏場の高温多湿は食中毒菌が増えやすい


猛暑が続く8月。外気温は35℃を超える日も多く、じめじめした空気に
包まれています。そして、この高温多湿な環境が食中毒が増え始める原因
なのです。そのため、特に8月は厚生労働省によって「食品衛生月間」に
定められています。

6月~9月は細菌が原因となる食中毒が多く発生します。これは、食中毒
の原因となる病原性細菌の多くが、20℃以上で活発に活動し始め、私たち
人間の体温とほぼ同じ37℃付近で最も増殖することが原因です。また、
夏場に暑さで疲れてしまった体は、免疫力が低下して抵抗力が減少してし
まいます。そのため、普段よりも病原性細菌が体に侵入しやすくなってい
ることも一因です。

一方、「ノロウイルス」や「A型肝炎ウイルス」などのウイルスは、実は
夏場にはそれほど多く食中毒を引き起こしません。これは、ウイルスが冬
場の乾燥した低温を好むからです。そのため、ウイルス性食中毒の多くが
11月~2月に発生しています。 



 夏場の食中毒菌を理解して適切な対策を心掛けよう


ひとことで「食中毒菌」と言っても、その病原性細菌の種類は様々です。
潜伏期間や症状、また原因食品についてもそれぞれ異なります。今回は一
つひとつを詳しく見ていくことは出来ませんが、概要をお伝えしますの
で、ぜひ参考にしてください。

<腸管出血性大腸菌(O-157など)>
・感染源:ユッケ生食肉、牛肉タタキ、ローストビーフ、レバー、野菜サ
ラダなど
・症状:12~60時間の潜伏期間後に、激しい腹痛、下痢。発熱と嘔吐は
稀。発症後2~9日間、場合によっては数週間症状が持続。
・対策:原因菌は通常75℃、1分間の加熱で死滅する。しかし、水分が少
ない場合はさらに強い加熱が必要であり、加熱調理が対策に効果的。

<サルモネラ>
・感染源:鶏卵が多い。食肉、魚、自家製マヨネーズ、洋生菓子も感染源
として知られる。
・症状:18~36時間ほどの潜伏期間後に、発熱あるいは腹痛で急激に発
症する。悪心、嘔吐、繰り返し襲う下痢を伴う。発熱は38℃~40℃くら
いになることもある。多くは数日で回復する。
・対策:調理工程中に必ず加熱殺菌して使用することが大切。鶏卵に関し
ては近年、サルモネラフリーの卵も販売されている。

<カンピロバクター>
・感染源:鶏肉やレバーなどの生肉。卵からの感染も知られる。
・症状:潜伏期間は2~7日と長め。腹痛、下痢、発熱(38℃付近)、頭
痛、悪心、だるさ、筋肉痛などが現れやすいため、初期症状は風邪と間違
えられることもある。一週間程度で自然治癒する。
・対策:75℃、1分間以上の加熱で殺菌可能。カンピロバクターによる食
中毒は、日本で最も発生件数の多い食中毒。ノロウイルスによる食中毒の
方が患者数は多いが、発生件数はカンピロバクターを原因菌とする食中毒
の方が多い。カンピロバクターによる合併症として有名なものに、手足や
顔面の神経麻痺や呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」があ
る。

<腸炎ビブリオ>
・感染源:魚介類、刺身、それらの加工品
・症状:12時間前後の潜伏期間の後、激しい腹痛や下痢、嘔吐を起こ
す。腸炎ビブリオは増殖速度の早さに特徴があり、適切な条件が揃えば
8~10分に一回分裂して増殖する。そのため、わずかな時間で大量の腸炎
ビブリオが発生する恐れがある。
・対策:加熱殺菌を行って調理する。また、冷蔵保存を徹底することが増
殖抑制につながる。近年では、飲食店での対策が進み、日本における腸炎
ビブリオ食中毒発生件数は急速に減少している。

<黄色ブドウ球菌>
・感染源:おにぎり、弁当、調理パン、菓子類
・症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢。黄色ブドウ球菌は普段人間の皮膚に
も住んでいる常在菌であるが、食品中に入ると毒素を産生する。
・対策:人間の皮膚から食品に移らないように、手袋を使用することが効
果的。菌は熱に弱いが、毒素が産生されると熱では分解されない。冷蔵状
態では毒素が作られないため、冷蔵保存が有効。

こうした病原性細菌による食中毒を防ぐために、共通してできることがあ
ります。まずは以下の3点を徹底して心掛けることで、食中毒菌から夏場
の疲れた体を守りましょう。

●十分な加熱を行う→中心部を75℃以上で1分間以上
●食品を新鮮なうちに食べる→冷凍・冷蔵保存して早めに使い切る
●感染拡大を阻止する→感染者の対応後、手洗いや消毒を徹底する 



 食中毒などの感染症を予防する「食品成分」があるの!?


実は、病原性細菌による食中毒などの感染症を予防する「食品成分」の研
究が進んでいます。中でも、香辛料や香辛野菜には高い抗菌作用がありま
す。例えば、以下のような食品成分(香辛野菜)が知られています。参考
までに、他の感染性細菌に対する事例も載せています。(左が病原性細
菌、右が香辛野菜)

・大腸菌:オールスパイス、ガーリック、クローブ、コリアンダー、サン
ショウ、シナモン、タイム、ミント、ローレル
・ブドウ球菌:アニス、ガーリック、タイム
・その他食中毒菌:オレガノ、クローブ、シナモン
・コレラ菌:オールスパイス、クローブ、シナモン、ジンジャー、マス
タード、ワサビ
・ピロリ菌:アオシソ、セージ、タイム、ペパーミント

また、黄色ブドウ球菌や腸炎ビブリオ、ウェルシュ菌、ボツリヌス菌など
は、普通に飲む緑茶の10分の1から2分の1の濃度のカテキンで抗菌作
用を示します。腸管出血性大腸菌(O-157)に対しても同様です。紅茶や
ウーロン茶、クランベリー、海藻、納豆、ブドウ、ココア、プロポリスな
どにも抗菌活性が見いだされています。

夏場の疲れた体の抵抗力を上げるためには、免疫力を整えることも大切で
す。そのためには、体の免疫細胞の60%以上が集まる腸の中で、善玉菌を
増やすことが重要です。食物繊維の摂取によって善玉菌が増えることで免
疫力のアップにつながります。さらに、善玉菌が作り出す有機酸は、病原
性細菌に対する抗菌作用を発揮し、また腸内が酸性になるため有害菌が増
えにくい環境を作ることもできます。

食中毒を適切に予防するため、適切な食品の扱いに注意するとともに、普
段から体の抵抗力を上げることで食中毒菌に負けない体づくりを心掛けま
しょう。