第44回 『腸のケアを心掛けて今日からアンチエイジング| オーエム・エックス博士の知恵袋

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オーエム・エックスの社長 高畑宗明(農学博士)です。

先日、2013年の日本人男女の平均寿命が発表されました。男性は80.21
歳、女性は86.61歳でいずれも過去最高を更新し、男性は初めて80歳を
超えたことが分かっています。国際的にみると女性は2年連続で世界一、
男性は4位に上昇しています。

さらに、こうした統計から予測すると、2013年に生まれた子供が65歳ま
で生きる可能性は男性で88%、女性で93.9%であり、さらに90歳まで生き
るのも男性で23.1%、女性では47.2%にもなるそうです。医療技術が向上
し、がんや心臓病、脳卒中で死亡する人の数が減っていることが大きな要
因です。こうした中、益々QOL(Quality of Life:生活の質)、つまり健
康寿命の大切さが問われるようになっています。

今回は、腸内環境と加齢について特集します。まだまだ分かっていないこ
とも多くありますが、腸と加齢について理解して、今日からアンチエイジ
ング対策をしていきましょう。


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 第44回 『腸のケアを心掛けて今日からアンチエイジング 
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 出生から高齢までの間に腸内細菌は変化します


私たちは生まれてから死ぬまでの間、たった一人で生きているわけではあ
りません。例え、周りに誰も居なくなって一人ぼっちになっても、あなた
の体にはたくさんの共生者が暮らしています。それが「腸内細菌」です。

でも、生まれる前にお母さんのお腹の中では私たちの体は「無菌」状態で
す。そして産道を通ってくる間にお母さんの菌を受け継ぎ、さらに外の世
界に出た瞬間に多くの微生物に触れて体に取り込んでいくのです。こうし
て取り込まれた微生物は腸内細菌として私たちと一緒に生涯を共にするこ
とになります。

腸内細菌は一種類ではありません。実に500~1000種類、1000兆個もの
微生物が一緒に生活しています。腸内細菌のバランスの変化は、大きく分
けて生涯のうちに2回あります。1回目は離乳食のタイミングです。通
常、赤ちゃんの時はビフィズス菌が多いのですが、離乳食をきっかけに大
きく変化し、大人と同じ食事をするようになってからは、基本的に安定し
たバランスを保つことになります。このバランスが60歳前後まで続くの
です。そして、2回目がこの60歳~70歳のタイミングなのです。
 


 加齢によって腸内細菌バランスが変化する理由とは?


それではなぜ、このタイミングで腸内環境が大きく変化していくのでしょ
うか?実は、明確な答えは分かっていません。しかし、30代や40代の頃
の食生活や運動、睡眠などの生活習慣の乱れの蓄積が、おそらく50歳か
ら60歳の間に体の変化として現れてくるのだと考えられています。

実際、人の腸内細菌のバランスの変化は、短期間の食事の変化だけでは変
わらないことが分かっています。これは、腸内環境の変化は長期的な食生
活の内容に影響を受けることを表しています。そのため、長期間かけて少
しずつ溜まっていった悪影響が、形となって60歳前後で姿を見せるので
す。

一般的に、60歳以降に大きく数が減少すると言われているのが「ビフィ
ズス菌」です。赤ちゃんの時に体を守ってくれていたビフィズス菌は、青
年期から大人になってもお腹の中に約10%の割合で存在し、腸の状態をケ
アしてくれています。しかし、その数は60代以降に次第に減少し始める
と言われています。ただし、高齢者の方の中でも食生活や住環境などの個
人差が大きいことも分かってきています。

このように個人差がある高齢者の腸内細菌ですが、以下の点においては高
齢者の中でもはっきりとした違いが現れていることが発表されています。

<薬を日常的に飲んでいるかどうか>

高齢になるに従って、病院に通う頻度が高くなります。およそ70%の高齢
者は何らかの原因で病院に通い、薬を処方されて日常的に摂取していま
す。このように医薬品を日常的に摂取している方と、薬を飲んでいない方
とを比較すると、ビフィズス菌や腸の炎症を沈めてくれる種類の微生物が
減少していることが分かっています。

さらに、抗生物質の飲用有無も腸内細菌のバランスに影響を与えます。高
齢者の腸内細菌バランスの悪化の原因の一つに、抗生物質が原因で増加す
るClostridium difficile(クロストリジウム ディフィシェル)という
悪玉菌があります。この菌が増加すると、毒素が作られて下痢が起こりや
すくなり、さらにビフィズス菌などの善玉菌が減少する原因となってしま
うのです。

<住環境と食生活の違い>

高齢者の住環境に注目した研究も行われています。高齢者の中で、自宅で
長期的に暮らしている一人暮らし傾向のある人と、複数人で施設で暮ら
している人とを比較したところ、それぞれに明らかな腸内細菌バランスの
違いがあることが分かっています。

長期的に一人暮らし傾向のある人では、血液中のグルコース(糖)や脂質
が増加し、慢性的な炎症状態がみられます。一方で、複数人で一緒に暮ら
している人では腸内に酢酸や酪酸といった有機酸が多くみられました。酢
酸や酪酸は、腸の炎症を沈めて健康を保つと同時に、腸の細胞のエネルギ
ーになります。このため、複数人でコミュニティを形成して暮らしている
高齢者の方が、腸内環境が良好であるということになります。

この違いを出している理由の一つに、食事の内容も挙げられます。実は、
この研究の中で複数人で施設で暮らしている高齢者では、脂肪の摂取量が
少なく食物繊維の摂取量が多いことが分かっています。

その反面、長期で一人暮らし傾向にある高齢者は、脂肪の摂取量が多くて
食物繊維の摂取量が少ないことが示されています。こうした一人暮らし傾
向にある高齢者では、歯や咀嚼の状態が悪化しており、食べ物を飲み込む
力も弱まっている傾向があります。また、腸の運動性も低下し、便秘がち
の方も多くなってしまうのです。


 腸のケアを心掛けて今日からアンチエイジング


様々な研究データを通じて、60代~70代にかけて、加齢による薬の摂取
量の増加、住環境の変化、そして食事の内容の変化が腸内環境の老化に大
きな影響を与えていることが分かってきました。

ただし、こうした変化は急に訪れるわけではありません。腸内細菌のバラ
ンスも長期的な食生活の内容によって変化していくように、長い目でみて
生活リズムを整えることが必要です。つまり、50代でなんとなく体の調
子が悪いなと感じるとすれば、その原因は30代~40代にかけての生活内
容にあります。そして、60代~70代にかけての生活状態は、50代前後の
食事内容や体のケアに大きく左右されるのです。

腸内環境を整えるためには、以下の内容がおすすめです。

・なるべく加工していない、食物繊維の多い食生活
・定期的に発酵食品を摂取する
・薬の量をなるべく減らす
・口腔ケアを心掛ける
・水分の摂取、睡眠、軽い運動の量を増やす

1つ1つを細かくみることは今回できませんが、どれも腸のケアに欠かせ
ないポイントです。でも、それを「きちんと続けること」の方が遥かに重
要です。体の不調は、それまでの長期的な生活リズムの乱れに原因がある
ことを理解し、その乱れを整えるためには長い時間を掛けて取り組まなけ
ればなりません。

5年後、10年後の活き活きとした健康生活のためには、1日や1ヶ月のケ
アだけでは十分ではありません。長い目でみることで次第に体は変化して
いくのです。私たちの体の細胞が生まれ変わるためにも、3ヶ月という月
日が必要です。逆に言うと、3ヶ月間きちんと毎日腸のケアを続けること
で、体に良い変化が生まれてくるはずです。そのためにも、今から少しず
つ毎日の腸ケアを続けていきましょう。