【最新研究情報】早食いの人は要注意!咀嚼は日々の肥満対策

早食いの人は要注意!咀嚼は日々の肥満対策

忙しさのあまり、ついつい早食いになってしまう…。食べ物を噛まなくてもスルッと口の中に入ってくる。普段、気がついたらおろそかになりがちな「咀嚼」が、実は肥満対策に有効!?食事の際に「噛む」動作を見直して、体重増加を防ぎましょう。

減り続ける日本人の「咀嚼回数」早食いの人には肥満が多い傾向が

 色々なダイエット法やダイエット食品が、メディアや雑誌で取り上げられています。でも、なかなか効果を得られない人も多いのではないでしょうか?そのような中、毎日の食事の食べ方が肥満と深く関わっていることが分かってきました。それが「咀嚼」です。

 日本人の咀嚼回数は、戦前は一度の食事で約1400回、さらに昔の弥生時代には約4000回も噛んでいたと言われています。一方、現代の日本人は約600回にまで減少しています。この原因は柔らかい食べ物の増加にあります。インスタント食品などの普及により、硬い食べ物よりも柔らかい食べ物が好まれる傾向は年々加速されています。国民の平均体重をみると、20代の女性を除けば年齢層や性別を超えて増加の一途を辿っています。

 平成21年の国民健康栄養調査で、肥満度と食べる速さの関連性を調べた結果、男女とも肥満度が高い人ほど食べる速さが「速い」人の割合が多く、「遅い」人の割合が少ないことが分かりました。早食いの人には肥満の人が多いというのは、学童においても同じ傾向がみられ、多くの研究によって裏付けされています。

食事の際の血糖値の変化が大切早食いはこの働きをマヒさせます

 

 まずは、十分に咀嚼をせずに食事をとる「早食い」の影響をみてみましょう。食事をすると血液の中のブドウ糖濃度が上昇します。この際に生じる血糖値の濃度変化に応じて、脳の視床下部にある満腹中枢と摂食中枢が刺激されます。

 通常は、食事をとると血糖値が上昇して満腹中枢が刺激され、食事をとりたいという欲求が抑えられます。その後次第にお腹が空き始め、血糖値が低下することによって摂食中枢が刺激されて食事をとる行動につながります。

 しかし、食事をとった際のブドウ糖の濃度上昇、つまり血糖値の上昇にはある程度の時間が必要です。早食いの人では血糖値の上昇による満腹感が得られる前に食べ物を口にしてしまうため、過剰に摂取してしまうと考えられています。

 噛めない原因は食べ物の柔らかさだけではありません。歯並びの悪さや顎関節症(がくかんせつしょう)も噛むことの障害になります。力仕事、ストレス、うつ伏せ寝などの悪い姿勢もアゴに負担をかける原因に。「咀嚼」をしっかり行うためにも、十分注意してみましょう。

咀嚼によって、食欲を抑える神経ヒスタミンが作られます

 咀嚼と肥満や摂食行動の関係性は、血糖値だけではありません。咀嚼と食欲との関係を、少し化学的にみていきましょう。時間をかけてよく噛むと、脳の働きが活発になり「神経ヒスタミン」という化学物質が脳内で分泌されます。この神経ヒスタミンは満腹中枢や交感神経を刺激し、食欲を抑える働きを示します。

 ネズミを使った研究では、満腹中枢にある神経ヒスタミンが作られないような状態にした場合、1回の食事の量と、食事の持続時間が増加することが分かりました。一方で、食事をとる速度は変化しませんでした。つまり、うまく神経ヒスタミンが分泌されなければ長い時間をかけてたくさんのエサを、同じペースで食べ続けてしまうことになります。反対に、神経ヒスタミンの合成を促進させる処理をすると、食欲を抑える反応が強く起こります。

 また、咀嚼によって分泌された脳の神経ヒスタミンは、神経を活発に働かせることで、食欲の抑制作用だけでなく、体の中で脂肪の分解促進と合成抑制作用を行います。そしてエネルギー消費も高まることで体脂肪の蓄積を減らす作用があるのです。

 早食いの人では脳内での神経ヒスタミンの分泌が少なく、咀嚼回数が少ないために満腹中枢刺激が十分に行われません。その結果満腹を感じにくい状態になり、過食になりやすいのです。神経ヒスタミンは外から摂取しても脳の入り口にあるバリアによって脳内に取り込むことができないため、咀嚼によって分泌を促す必要があるのです。早食いでは、神経ヒスタミンの分泌が不十分であるために肥満を引き起こすと考えられます。

脂肪細胞と上手に付き合うために咀嚼でレプチンの分泌を促そう

 また、食欲抑制に働くホルモンとして有名なのが「レプチン」です。レプチンは脂肪細胞から分泌されます。脂肪と聞くと「太る」と思われる方も多いかと思いますが、脂肪細胞の役割は多彩です。生命活動のためのエネルギー貯蔵と供給を行っているだけでなく、脂肪細胞は体温維持のための断熱作用や内臓の位置を保つ機能を持っています。さらに、女性ホルモンであるエストロゲンの産生にも必要です。女性が痩せすぎると、女性ホルモンの分泌が減り、生理不順などさまざまな問題を引き起こします。このように、脂肪は一定量は必要で、私たちの体にとってよい働きをしてくれています。

 通常は、この脂肪細胞からレプチンが分泌されて食欲が抑制されることで、過剰な摂食が抑えられます。実は、このレプチンの分泌は神経ヒスタミンと関係しています。咀嚼によって神経ヒスタミンが増え、満腹中枢や交感神経が刺激されて肥満細胞からレプチンの分泌を促進します。このように、咀嚼は色々な反応を引き起こして食欲をコントロールする大切な役割を果たしているのです。


噛むことはこんなに大切!
食べ物をよく噛まないと栄養バランスも乱れがちに!

咀嚼をきちんと行わないと、太りやすくなるだけではありません。栄養状態を比べてみると、咀嚼になんらかの問題を抱えている方は、ビタミンやミネラルなどの栄養摂取量に問題が。「噛む」ことを大切にして、しっかりと栄養バランスのとれた食生活を目指しましょう。

噛めなくなる原因はさまざまですが、高齢になるにつれて増加するのが口腔内環境の乱れによるものです。虫歯や歯周疾患などによって歯の数が減ってしまうこと、唾液が減少してしまうことなどが挙げられます。自分の歯を20本以上有する人の割合は、60歳以上で約7割、65歳以上では約6割と減少していきます。また、薬を飲む回数が増加すると、副作用によって唾液の分泌が減少する場合があります。咀嚼に問題がある人と問題がない人を比較した、栄養調査の結果があります(平成16年国民健康・栄養調査)。咀嚼に問題がある人は、ビタミン、ミネラル類や食物繊維の摂取量が少なく、穀物からのエネルギー摂取が多いことが分かっています。また、歯の数が19本以下の人は20本以上ある人と比較して、たんぱく質、ビタミン、ミネラル類の摂取量が少ないというデータもあります。高齢者の方だけの問題ではなく、しっかりと栄養バランスを整えるためにも、咀嚼回数に気をつけて食事をとるように心がけましょう。

ガムを噛んで咀嚼回数アップ!

咀嚼回数を増やすためには、食後にガムを噛むこともおすすめです。ガムを噛むと、咀嚼だけでなく唾液の分泌量も増加します。唾液には、さまざまな抗菌物質が含まれるため、歯周病予防にも効果的。さらに、唾液には酸を中和する能力があるため、歯の再石灰化を促進します。糖質0gのものや、キシリトールの含有率が高いガムがおすすめです。