第18回 『美肌の秘訣は肌の常在菌を育てること!(基礎編)』 | オーエム・エックス博士の知恵袋

こんにちは!
いつも弊社のメルマガを読んでいただき、ありがとうございます。
オーエム・エックスの社長の高畑宗明(農学博士)です。

春になり、少しずつ外の気温もあたたかくなってきました。これまで寒さの
あまり屋内に閉じこもり、運動から縁遠い生活を送っていた方も多いのでは
ないでしょうか。私もどうしても運動量が減ってしまうため、意識的に歩く
回数を増やしたり、お風呂に長めに浸かったりして「汗をかく」機会を増や
していました。これからの季節、ようやく外で活発に動きたい気分になって
きたので、スポーツにも積極的に参加していきたいと思います。

さて、実は今回のテーマである「皮膚常在菌」は、実は「汗」と密接な関係
があります。「汗」と聞くと不快なイメージを抱くことが多いかもしれませ
んが、実は「汗」自体は無臭の成分です。皮膚に住んでいる微生物の種類が
偏っていると、この「汗」を利用して臭い成分を合成しています。一方で、
「汗」は微生物のバランスが良いときは肌のバリア機能にとって必須の役割
を果たします。それでは、これから私が4月と5月の2回に渡り「肌と微生
物の関係」を基礎編と発展編に分けてお届けします!

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 第18回 『美肌の秘訣は肌の常在菌を育てること!(基礎編)』
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 皮膚にも1兆個を超える微生物が住んでいる!



このメルマガを読んでいただいている方は、私たちの腸に約1000種類1000
兆個の微生物が共生していることはご存知のことと思います。この微生物た
ちを「腸内細菌」と呼び、病原性微生物の感染予防だけでなく、免疫の活性
化やビタミンB群の合成、食事成分の分解、有機酸の合成などなど私たちの
体にとってなくてはならない働きをしています。今回は腸内細菌についての
詳細は割愛しますが、この微生物たちが居なければ私たちは生きていけない
ことをご理解いただければと思います。

実は、微生物と私たち人間との共生関係は、腸内に限ったことではありませ
ん。皮膚や口、眼、鼻、気道、尿路、肛門、性器と全身の各部位にそれぞれ
適した種類の微生物が住んでいて、私たちの体を外敵から守り、さらに体に
とって良い作用をしています。腸の微生物は「善玉菌」「悪玉菌」と分類さ
れることがよくあります。厳密には悪玉菌と呼ばれる大腸菌も、消化を助け
たりビタミンを作ったり、外部から入ってくる病原性の強い菌を排除する働
きをしているため、悪さを常にしているわけではありません。ひと言に大腸
菌と言えどもその種類はたくさんあり、ごく一部が悪さをする病原性を持っ
ているのです。逆に、「善玉菌」の代表格である乳酸菌も、口の中では歯周
病の病原菌だと指摘されることもあります。ただし、話を進める上ではわか
りやすいので、便宜上人間にとって有益な働きをしてくれるものを「善玉
菌」、害のあるものを「悪玉菌」と分けてみていくことにしましょう。

今回のテーマは「肌の常在菌」。実は皮膚にも善玉菌がいるのをご存知でし
ょうか?皮膚には平均10種類ほどの常在菌(常に生息している微生物)が、
約1兆個もいるといわれています。“平均10種類”とここで書きましたが、
実は最近これよりも遥かに多い種類の常在菌が肌に住んでいることが分かっ
ています。(これについては次回お話をしますので、今回はこれまでの一般
論の中で進めていきます。)皮膚に住む常在菌は、普段は人間に無害な非病
原性菌で、代表的なものとして、表皮ブドウ球菌、アクネ菌、真菌類(カビ、
酵母)などがあります。これらの常在菌がバランスよく生息していることが、
肌をしっとりさせる条件なのです。


 汗と皮脂と常在菌が、天然の保湿クリームを作り出す!


私たちの肌は、健康な状態の時にはpH 4.5~6.5の弱酸性に保たれています。
肌の表面が弱酸性だと雑菌の繁殖が防がれ、外部の刺激から肌が保護されま
す。ここでいう雑菌は皮膚常在菌ではなく、体に悪影響を与える菌のことで、
肌をアルカリ性に傾けてかゆみの原因となる黄色ブドウ球菌などを指します。
こうした雑菌の繁殖を防ぐために、皮膚を弱酸性に保つ大切な役割を果たし
ているのが皮膚常在菌なのです。

皮膚常在菌の中でも、表皮ブドウ球菌は代表的な菌種です。実は、この表皮
ブドウ球菌は人間の汗や皮脂をエサにして生きています。この際に作り出す
成分が弱酸性の脂肪酸です。脂肪酸は、私たちの汗や皮脂と混ざり合って、
pH 4.5~6.5の弱酸性の理想的な皮脂膜を形成します。この皮脂膜が肌の表
面を覆っていると、潤いのあるきれいな肌質が保たれ、外部からの病原菌や
雑菌をブロックしてくれます。最近は美肌のために様々なスキンケア用品が
販売されていますが、皮膚は本来、保湿効果のある天然のクリームを微生物
と一緒に自ら作り出しているのです。

CMや広告を見ると、「ニキビの原因はアクネ菌」といわれることが多くあり
ます。しかし、アクネ菌も表皮ブドウ球菌と同じように、皮脂を脂肪酸とグ
リセリンに分解する働きがあります。グリセリンは水になじみやすく保湿性
に優れたアルコールの一種で、化粧品の保湿成分としても扱われる成分。私
たちの皮膚が健康な状態に維持されている限り、悪玉菌のように扱われてい
るアクネ菌も肌にとって大切な働きをしているのです。

アクネ菌がニキビを作るのは、ストレス、肉食中心の食事、男性ホルモンの
分泌過多などで皮脂が過剰に分泌された場合です。アクネ菌から出るリパー
ゼという酵素が原因で毛穴がふさがれ、その中でアクネ菌が異常増殖するこ
とでニキビができます。腸内の悪玉菌のように扱われる大腸菌も、腸内環境
が良い場合には私たちにとって有益な働きをしています。クロストリジウム
菌も毒素を作るものもありますが、普段は免疫の調節に必須の役割を果たし
ています。皮膚常在菌もバランスを崩すことで肌荒れにつながり、外部から
の刺激に弱くなってしまうのです。


 美肌を手に入れるために皮膚常在菌を生き活き「育菌」!


あなたが、清潔になくてはいけないと思うがあまり、必要以上に体を洗い表
皮ブドウ球菌たちが住みにくい環境を作ってしまったら。あなたの肌は乾燥
しはじめ、かゆみや湿疹が出てしまうかもしれません。これは、表皮ブドウ
球菌が減って弱酸性だった肌がアルカリ性に傾き始めたことを意味していま
す。こうなると、今度はアルカリ性を好む黄色ブドウ球菌という悪玉菌がは
びこってしまいます。黄色ブドウ球菌は化膿菌なので、洗いすぎて傷ついた
肌をさらなる繁殖の場として、とびひ、中耳炎、肺炎、食中毒などの色々な
疾病に結びつく恐れがあります。

また、アトピー性皮膚炎の皮膚には黄色ブドウ球菌が多く、かゆみを誘発し
ているといわれています。かゆくてかいてしまうことで肌は傷つき、さらに
黄色ブドウ球菌が増えるという悪循環に陥ります。黄色ブドウ球菌を殺菌す
るために抗菌剤を塗ればかゆみはおさまりますが、同時に表皮ブドウ球菌も
死んでしまい、さらに症状が悪化することも考えられます。皮膚常在菌のバ
ランスを考えた生活を送らなければ、健康な肌は取り戻せないのです。

皮膚の常在菌のバランスを保つためには、上手に菌を育てなければなりませ
ん。これを最近は「育菌」と呼んでいます。以下に数点の「育菌」ポイント
を上げましたので、ぜひ実践してみてください。

<紫外線や乾燥を避ける!>
皮膚常在菌は紫外線が苦手です。適度な紫外線対策は、「育菌」にも効果的
です。もちろん、肌の再生のためには十分な睡眠も取らなくてはなりません
。あまり過度な日光の防止は、肌で合成されるビタミンDの抑制になってしま
いますので気をつけてください。また、UVカット化粧品などを使いすぎると
、化粧品成分の刺激が皮膚常在菌に悪影響を与えてしまいます。乾燥対策も大
切です。女性は男性に比べて皮脂の分泌が少ないので、化粧水や乳液で保湿
を心がけましょう。ただし、これも過剰に塗ることは禁物です。

<洗い過ぎ、不潔になり過ぎは逆効果!>
皮膚常在菌の好物は私たちの「汗」です。高温多湿な地域の人に肌がつやつ
やの人が多いように、気温が高いと汗をかき、湿度が高いと乾燥も防げます。
「汗」をしっかりかく生活を送り、常在菌が天然の保湿クリームを作り出す
材料を提供しましょう。また、肌を洗い過ぎないことも「育菌」のためには
大切です。体を洗い過ぎては皮膚常在菌の働きも弱くなってしまいます。た
だし、「汗」をかいた状態を放っておくと、今度はかゆみなどが生じて肌の
負担となり、皮脂が酸化することで肌荒れの原因にもなります。過剰に潔癖
なほど洗う必要がないということなので、肌を清潔に保つことは心がけてく
ださい。洗顔も、何度も繰り返すのではなく、1日2回程度が望ましいので
す。

今回は、皮膚常在菌について、一般的にいわれている内容を中心に記載しま
した。次回は、研究者として一歩踏み込んで、最新のDNA解析法方法から判
明した新しい事実や現象をみなさまにお届けしたいと思います。「実は肌の
微生物の種類は10種類ではなく○○種類だった!」「利き手の常在菌は反
対の手よりずっと多い!」などなど、面白い話題を盛り込んでいく予定です。
でも、今回の内容はもちろん日常生活に取り入れることでしっとり肌につな
がりますので、ぜひ肌の常在菌と「共生」し、「育菌」ライフを楽しんでください!