第24回 『アスリートに胃腸の弱い人が多いのはなぜ?』| オーエム・エックス博士の知恵袋

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いつも弊社のメルマガを読んでいただき、ありがとうございます。
オーエム・エックスの社長の高畑宗明(農学博士)です。

『OM-X』の製造メーカーである株式会社バイオバンクは、本年度、大阪の
プロサッカークラブ「FC大阪」のメインスポンサーを務めています。
「FC大阪」は最速でのJリーグ入りを目指し、現在関西地区リーグ2部
を戦っており、先日の9月22日に行われた試合において、見事リーグ優
勝を飾りました。さらに、10月には東京で全国社会人クラブ選手権を控
えており、飛び級でのJFL入りを目指しています。ホームページもござい
ますので、ぜひ「FC大阪」で検索していただき、情報をご覧ください。

さて、研究者としては、アスリートの方々のように食事摂取量が多く、さ
らには消費エネルギーも多い人の腸内細菌叢が、どのような構成になって
いるのかがとても気になります。現在は、免疫関係の実験を日々行ってい
ますが、来年度はぜひアスリートの腸内細菌についても調査をしてみたい
と考えています。今回のメルマガは、そうしたアスリートにおいて、なぜ
胃腸の弱い人が多いのかという話題にスポットを当てて進めてみたいと思
います。

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 第24回 『アスリートに胃腸の弱い人が多いのはなぜ?』
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 アスリートの腸と血流との関係


アスリートの専属ドクターをしていらっしゃる先生から、以前「スポーツ
選手は胃腸が弱い人が多い」と伺ったことがあります。このことは色々な
研究データとしても報告されています。例えば、吐き気、けいれん、嘔吐、
下痢といった症状が、アスリートには多く見受けられます。そしてこの原
因は、1つには血流が変化することではないかと考えられています。

私たちの体には、絶えず血液が循環しています。血液は全身の細胞に栄養
分や酸素を運搬し、二酸化炭素や老廃物を運び出す役割を果たしています。
その他にもホルモンの運搬、体温調整、水分代謝の調整など、多くの重要
な働きを担っています。人間の血液量は体重の約1/13で、体重60 kgの
場合は約4.6 kgが血液の重さです。

このように、体の恒常性を保つために大切な役割を果たしている血液は、
トレーニングをした後に筋肉や心臓での要求性が高まります。そのため、
腸に供給される血液の量が減少して腸の細胞が弱くなってしまい、ぜん動
運動の低下や病原菌への感染リスクが高まってしまうと考えられています。
また、血液によって運ばれる免疫細胞の量も減少してしまうため、免疫機
能も弱まる恐れがあります。


 ストレスホルモン「コルチゾール」との関係


血流との関係とともに、コルチゾールと呼ばれるホルモンとアスリートの
腸の関係性も指摘されています。コルチゾールはストレスホルモンであり、
副腎皮質という場所から分泌されます。コルチゾールは日常的な様々なス
トレスをはじめ、激しい運動を行った際にも生成されるホルモンです。コ
ルチゾールは身体の防御機構として働くホルモンであり、筋を分解してで
も代謝を強化してストレスに対抗しようとします。普段は身体の状態を定
常に保つために必要不可欠な働きをしています。

しかし、極度の運動による身体的・精神的ストレスは、コルチゾールの分
泌を正常よりも高めてしまいます。アスリートと非アスリートを比較した
場合、アスリートは定期的なトレーニングにより身体へのストレスが増大
し、非アスリート群と比べて身体の異化作用(分解作用)が進んでしまう
ことも報告されています。この過剰に分泌されたコルチゾールが、胃や腸
に異変を来すのではないかと提唱されています。腸の組織には多くの免疫
細胞が集中していますが、コルチゾールはこの免疫細胞の働きを抑制して
しまうため、腸の働きが弱まっているとも考えられます。


 アスリートの腸に対する乳酸菌の有効性


こうした中、最近、アスリートに対する乳酸菌の効果が新たに発表されま
した(JISSN, 9 (2012))。オーストリアの研究者が、腸の細胞同士の結合
状態に重要な役割を果たしている「ゾヌリン」というタンパク質に注目し
ました。ゾヌリンの量が上昇すると、腸の細胞の結合状態が弱くなり、結
果として腸から異物が侵入しやすくなり、炎症作用や酸化ストレス反応に
繋がります。

今回行われた研究は、平均年齢38歳の23人の男性アスリートに対して、
14週間に渡り数種類の乳酸菌をブレンドしたサプリメントを飲んでもら
い、糞便中のゾヌリン濃度を測定するという内容です。プラセボ(偽薬)
も用いた二重盲験法で行われており、試験レベルは信頼度の高いものです。
(二重盲験法とは、医学の試験・研究で、実施している薬や治療法などの
性質を医師・実験者からも患者・被験者からも不明にして行う方法です)

試験の結果、プラセボ群と比較して乳酸菌摂取群では明らかにゾヌリンの
量が減少し、ほぼ正常時の量になっていました。また、それほど明らかで
はないにせよ、乳酸菌摂取群では炎症レベルを表す指標が低値を示してい
ました。ただし、一方では酸化ストレスのレベルを示す指標は、大きな変
化は見受けられませんでした。ゾヌリンという成分を指標とすると、乳酸
菌摂取はアスリートの腸の保護に効果的な作用をするという結果が得られ
ています。


 腸内細菌はコルチコステロンのレベルを低下させる


コルチゾールと同様に、ストレスを感じた際に「コルチコステロン」と呼
ばれるホルモンが分泌されます。マウスを使った実験で、このコルチコス
テロンと腸内細菌との関係が示されています。マウスを拘束した状態でス
トレスを与え、無菌状態のマウスと正常な腸内細菌叢を持つ(SPFマウ
ス)とに分けて、ストレス後のACTH(副腎皮質刺激ホルモン)とコルチ
コステロンの分泌量を比較しました。

その結果、無菌マウスでは正常腸内細菌叢のマウスに比べて、ACTHとコ
ルチコステロンの両方とも有意に高い分泌量が示されたのです。このこと
から、腸内細菌が存在しない無菌マウスでは、ストレスに反応する部位が
活性化して、ACTHやコルチコステロンの分泌量が増加することが分かり
ました。

また、この試験の面白いところは、無菌状態のマウスに正常な腸内細菌を
後から入れて正常マウスに近づけると、ストレス後のACTHやコルチコス
テロンの分泌量が次第に低下していくことが明らかになったことです。さ
らに、無菌マウスと正常腸内細菌叢のマウスとの間で、脳内神経成長因子
や脳内伝達物質濃度を比較すると、無菌マウスでは「幸せホルモン」と呼
ばれるセロトニン量も低下していることが分かりました。

つまり、腸内細菌がストレス応答を抑えることや、腸内細菌が脳内に神経
成長因子や神経伝達物質を送り込んでいることが示されたのです。そして、
免疫反応を高めて、外敵からの防御機能を上昇させているということにも
なるのです。このデータは直接的にアスリートを対象としたものではあり
ませんが、身体的ストレスを感じやすいアスリートにとっても、腸内細菌
叢の存在はとても大きいと予測されます。

このように、アスリートにおいて胃腸の状態がすぐれない人が多い理由に
は、血流の問題や、身体的ストレス時のホルモンの分泌量に左右されてい
ると考えられます。そして、その状態を改善し、正常な状態を保つために
は腸の環境を適切にケアしていくことが不可欠です。今回お示しした研究
結果のように、乳酸菌を摂取すること、さらには腸内細菌のバランスを整
えて行くことが大切です。また、ストレス時には交感神経系が有意に働く
ため、副交感神経の働きを高めることも重要です。弊社の『OM-X』は、ス
ポーツ選手に対する臨床試験も行っており、最大酸素摂取量の増加など有
益なデータが得られています。近年、ウォーキングやランニングに取り組
む方々が増えており、身体に負荷が掛かっていることも予測されます。ぜ
ひ、日々の運動時の身体のメンテナンスに、『OM-X』をお役立てください。