次亜塩素酸水は本当に新型コロナウイルスに対して効果がないの!?

最近、「次亜塩素酸水」には新型コロナウイルスに対する効果がない、といった報道があり、多くの方々が戸惑っていらっしゃると思います。ここで、次亜塩素酸についての種類や違いについてご紹介いたします。

「次亜塩素酸」には大きく分けて2タイプあります

実は、次亜塩素酸と呼ばれている殺菌剤には大きく分けて「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」の2種類があります。この2種類は、同じく塩素の酸化力によって殺菌効果を発揮しますが、その性質や効果を発揮する濃度、安定性などに大きな違いがあります。

・次亜塩素酸ナトリウム

次亜塩素酸ナトリウムは、いわゆるキッチンハイターやその類似品を指していて、キッチンなどではこの溶液を薄めて使用されています。次亜塩素酸ナトリウムは化学式ではNaClOとなり、強いアルカリ性を示します。例えば、pH9でほとんど完全に電離して次亜塩素酸イオン(OCl-)という形の塩素になることで、その効果を発揮します。

次亜塩素酸ナトリウムの水溶液がコロナウイルス対策として効果を発揮する濃度(有効塩素濃度)は、厚生労働省によると500ppm(0.05%)です。この濃度はとても高く、強力な殺菌作用がある一方で強い漂白作用があり、衣服は脱色されてしまう恐れがあります。また、アルカリ性なので、皮膚の弱い人はゴム手袋などの着用が必須です。他にも、食品などの有機物と反応することで発がん性物質のトリハロメタンが生成されてしまい、健康上の問題が生じることもあります。

こうした点から、
− 強アルカリのため手指消毒など、人体には使えない
− 衣服などに付くと脱色する恐れがある
− 強アルカリであり酸化剤であるため、金属の腐食性がある
− 樹脂を侵してしまう場合がある
− トリハロメタンなどの有害物質が生じる危険性がある

などの危険性があります。
特に、人やペットに対して大変有害ですので、飲んだり吸い込んだりしないように、十分な注意が必要です。

・次亜塩素酸水

同じ「次亜塩素酸」と書いてあっても、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムはその性質が異なります。次亜塩素酸水は、厚労省の定義によると「塩水や水道水を隔膜式電気分解することによって得られる有効塩素濃度10〜80ppmの次亜塩素酸水溶液を示すもの」とされています。性質としては、pHは弱酸性〜中性を示し、その主成分は次亜塩素酸HClOです。この次亜塩素酸分子中の塩素(Cl-)がウイルスの成分に結合して働きを阻害します。次亜塩素酸ナトリウムと比べて低い濃度で効果を発揮することが特徴です。

一方で、次亜塩素酸水は化学的に不安定で、時間と共に常温で分解し、光(紫外線)があることでその分解速度はとても速くなります。そのため、製造後に有効塩素濃度が下がってしまいます。特に次亜塩素酸水は有効塩素濃度が10〜80ppmととても少ないため、製造後に時間が経過したものは水と変わらない液体になる可能性があります。つまり、水に近いくらい有効塩素濃度が低くても効果を発揮することが次亜塩素酸水のメリットですが、すぐに分解してしまうというデメリットも大きいのです。

次亜塩素酸ナトリウムも次亜塩素酸水も危険なの?

製品評価技術基盤機構(NITE)の試験結果によって、各所で「次亜塩素酸水には効果がない」という意見が広がりました。しかしその後、NITEでは「次亜塩素酸ナトリウムは従来から新型コロナウイルスの消毒に使われています。次亜塩素酸水の有効性については現在検証中です」とコメントしています。つまり、次亜塩素酸水については効果を示すデータもありますがそうではないデータもあり、引き続き検証試験を実施する、という意味合いになります。先にお伝えしたように、保存状態による分解やpHなどの変化によって効果が変化するため、様々な条件で検証が必要ということです。

そして、危険視されているのは「次亜塩素酸ナトリウムの空間噴霧」です。次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性が非常に強いため、人体に対して大きな影響があります。そのため、キッチンハイターなどを薄めて加湿器に入れ、それを空間に噴霧するような使い方は推奨されていません。

一方、次亜塩素酸水を消毒目的で人がいる空間に噴霧することは、いまだ確立された評価方法は定まっていません。ただし、有効性や安全性は各社が評価を行なっており、これまでにも病院等で噴霧することで菌やウイルスの数が減少したというデータもあるため、次亜塩素酸ナトリウムの噴霧よりは危険性は低いと考えられます。

まとめると、新型コロナウイルスに対して、次亜塩素酸ナトリウムは効果は高いけれど、高濃度のアルカリ性を示すため安全性について注意が必要。次亜塩素酸水は低濃度で効果を発揮するけれど、保存方法や容器によっては安定性に欠けるため効果が実証されるには引き続きの検証が必要ということになります。

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