第28回 『乳酸菌は生きたままじゃないと効果がないの?』 | オーエム・エックス博士の知恵袋

ご無沙汰しております!
いつも弊社のメルマガを読んでいただき、ありがとうございます。
オーエム・エックスの社長の高畑宗明(農学博士)です。

先月はメルマガをお休みしてしまいご心配をおかけいたしました。
2月上旬から、ベルギーの首都ブリュッセルで行われた「Probiotic and
Microbiome Conference 2013(乳酸菌と腸内細菌の国際会議)」に出席す
るため準備をしておりました。この会議は、世界の乳酸菌や腸内細菌の研
究者が一同に介し、最新の研究情報を発表・共有するために開催されまし
た。会議の中では、欧州での乳酸菌市場についてや、腸内細菌の最新解析
方法を用いた全体像の解明などの発表がありました。また、スポーツ選手
の腸の状態に関する発表など、身近なテーマも取り上げられとても有意義
な会議となりました。今後もこれらの情報を参考にし、さらに有意義な研
究を発表できるように、研究を続けてまいります。

さて、今月のメルマガは、そんな乳酸菌についての定説についてコメント
します。乳酸菌といえば、「生きたまま腸まで届いて働く」ということが
謳い文句にされることがよくあります。でも実は、生きたままでなくとも、
私たちの体にとって大切な働きをしてくれる乳酸菌がたくさんいます。そ
して、発酵食品は実は乳酸菌の「死菌」が蓄積しているため体に良い食品
なのです。

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 第28回 『乳酸菌は生きたままじゃないと効果がないの?』 
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 乳酸菌は必ずしも生きていなくても大丈夫


まず、従来の「プロバイオティクス」と呼ばれる乳酸菌(このメルマガで
は乳酸菌とビフィズス菌を合わせて乳酸菌と呼ぶことにします)の考え方
について見ていきましょう。

【従来のプロバイオティクスの考え方】
・生きたまま腸まで届いて腸内に定着し、人間にとって有益な働きをする
微生物の総称

つまり、生きた乳酸菌が腸に「定着する」ことで、ビタミンを作ったり免
疫力を高める作用をし、有機酸を作ることで腸を刺激して活発にするとい
うことが定説でした。そして、今販売されている多くのヨーグルトや乳酸
菌製品が「生きたまま腸まで届く!」という謳い文句で販売展開されてい
ます。

しかし、最新の研究では、外から摂取した乳酸菌などのプロバイオティク
スは、体にとって「異物」であると判断されて、外に排出されてしまうこ
とが分かってきました。もちろん、乳酸菌の種類によっては、体に定着す
ることができる菌も存在しています。でも一言で「乳酸菌」と言ってもそ
の種類は数百種類もあり、1つの種類の中でも個別の菌がたくさんいる
ため、どの乳酸菌が自分の体に定着するかは「食べてみて体感で感じない
と分からない」のです。つまり、どの菌が生きたまま腸に定着するのかは、
個人差が激しいということになります。

一方で、「乳酸菌が体に良い効果を与える」ことは、これまでの多くの実
験データが証明しています。では、定着しないにも関わらず、体に良い影
響を与えることがあるのはなぜでしょうか?それは、乳酸菌の「菌体成
分」自体に、腸の細胞を刺激したり、腸内細菌のバランスを変化させる作
用があるからです。


 乳酸菌の「菌体成分」と「免疫」にどういった関連があるの?


乳酸菌の「菌体成分」とは、菌を形作っている成分の総称です。乳酸菌は
一つの細胞からできている微生物です。その細胞は「細胞壁」と呼ばれる
うすい膜で包まれています。そして、細胞壁には糖タンパク質と呼ばれる
鎖状のタンパク質が付いています。また細胞の中は「細胞質」と呼ばれる
液体で満ちていて、さらにはDNAが入っている「核」が存在しています。
こうした成分を「菌体成分」と一括りで表しています。こうした成分は、
乳酸菌が生きていても死んでいてもおよそ変化はしないので、必ずしも
「生きている必要はない」のです。

実は、この菌体成分のいずれかが、小腸や大腸にある「免疫に関わる受容
体(レセプター)」を刺激しています。小腸は、食品として摂取したさまざま
な栄養素を吸収するため、体にとっては外からの成分が初めて体内に取り
込まれる最前線の場所です。その小腸には無数のヒダがあり、ヒダの表面
は「絨毛(じゅうもう)」と呼ばれる小さな突起で覆われています。そし
て、初めて外部から吸収される物の中に、悪い物が含まれているかどうか
を判断し、「吸収するのか、それとも排除するのか」を決める「免疫細
胞」がたくさん集まっています。

また、大腸には1000種類1000兆個を超えるといわれる「腸内細菌」が住
んでいます。この腸内細菌は、未消化の食べ物を分解してくれるだけでな
く、アミノ酸やビタミンを作り出し、病原菌が増殖しないように酸性の成
分を合成しています。また、私たちが生活するためのエネルギーも、腸内
細菌が作る有機酸によって一部まかなわれています。このように、人間に
とって有用な働きをする微生物は、排除されることなく腸内で共生してい
ます。また、大切な微生物を排除しないことを決めているのも、免疫機能
だと考えられています。もちろん、病原菌を排除するのも免疫機能の働き
ですので、ここでも「共生するのか、それとも排除するのか」を「免疫
細胞」が決めていることになります。

こうした腸の細胞には、外部から侵入してきた病原菌などの異物を認識す
るために、色々な「受容体(レセプター)」が働いています。これは、危険
を察知するためのセンサーのようなものです。多くの種類のものを判別す
るために、レセプターの種類は10種類くらいあります。それぞれが病原
菌に対して反応し、抗菌性物質を腸から分泌しています。こうして、悪い
菌やウイルスの感染を未然に防いでいます。

乳酸菌の菌体成分が、腸の免疫を活性化する理由は、このレセプターを刺
激する作用があるからです。「乳酸菌は病原菌じゃないのに、なぜ反応す
るの?」と疑問を持たれると思います。実は、腸の免疫は「炎症」と「抗
炎症」のバランスがうまく取れた状態が適切なのです。腸内細菌が日常
から腸内細菌が腸を刺激して軽い「炎症(悪い意味ではありません)」
を起こさせることで、感染からの防御を行っているのです。ところが「炎
症」が過剰になるとアレルギー等に繋がってしまいますし、「炎症」が少
なすぎると体がだるくなったり感染症にかかりやすくなったりします。

このように、日常的に免疫細胞を刺激して感染防御を行うことは、とても
大切なことです。そのために乳酸菌の菌体成分は、役立つと考えられます。
ただし、全ての乳酸菌が同じような成分を持つとは限りませんので、乳酸
菌ごとの特長をよく知っておくことは必要だと思います。


 発酵食品は乳酸菌の「生菌」も「死菌」も含む素晴らしい食品


「生きた乳酸菌も必要だし、死んだ菌も大切だとなると、色々摂らなきゃ
ダメで大変!」と思われるかもしれません。でも、日本には「発酵食品」
という素晴らしい食品があります。特に日本古来の植物素材の発酵食品は、
乳酸菌や酵母で発酵させたものが数多く存在します。発酵に欠かせないこ
れらの微生物は、発酵の始めから終わりまで同じ菌が働き続けるわけでは
ありません。

微生物は私たちよりももっと短いスパンで一生を終えます。数分から数時
間で新しい菌と入れ替わり、働きを終えた菌は「死菌」として発酵食品中
に蓄積していきます。こうして発酵中に乳酸菌などの微生物は何世代も生
まれ変わり、発酵を支えています。そして、発酵が終了して完成した発酵
食品には、「生きた菌」はもちろん含まれますし、発酵期間中に蓄積した
「死菌」の菌体成分も豊富に含まれていることになります。発酵期間が長
く、加熱せずにきちんと微生物の世代交代が進んだ伝統的な発酵食品ほど
体に良いとされるわけは、こうした微生物の力によるところも大きいので
す。

弊社の発酵食品「OM-X」は、この乳酸菌の「生きた力」と「菌体成分の
力」を併せ持つ優れた発酵食品です。「OM-X」の発酵に利用している独自
の乳酸菌には、免疫力を高める効果も研究で認められています。また、
現在フランスの研究機関でも「OM-X」の免疫に関する実験が行われていま
す。今後も、みなさまのお体の健康にお役立てできるように、さまざまな
研究を通じて商品の付加価値を高めてまいります。どうぞ、日々の健康
維持のために、これからも弊社の「OM-X」をお役立てください。