第32回 『熱中症の悪化にも腸内環境が関連している!』 | オーエム・エックス博士の知恵袋

ご無沙汰しております!
いつも弊社のメルマガを読んでいただき、ありがとうございます。
オーエム・エックスの社長の高畑宗明(農学博士)です。

先月はメルマガを一回お休みしてしまい、ご心配をお掛けいたしました。
実は、7月9日と10日に、北海道で開催された「日本乳酸菌学会2013年
度大会」で発表を行ってまいりました。今回は「植物発酵エキスが腸管炎
症マウスモデルに与える治癒的特性の評価」という内容を発表してまいり
ました。植物発酵エキス、つまりOM-Xが腸の炎症や破壊に対して高い効
果を示したという内容で、たくさんの感想や質問をいただき、有意義な発
表となりました。現在、論文投稿の準備を進めており、後日みなさまにも
結果をお届けできることと思います。

さて、今回は「熱中症」の仕組みや注意点、さらには腸との関係性につい
てお届けいたします。ニュースや雑誌でも熱中症について取り上げられる
ことが多いため、よくご存知の方も多いのではないでしょうか。でも、そ
のような方でも「腸と関係がある」というのは意外に感じられると思いま
す。さらには、遺伝的に熱中症にかかりやすいタイプの人もいらっしゃ
るようです。昨今明らかになりつつある新しい知見を踏まえながら、一緒
に熱中症についてみていきましょう。

===============================
 第32回 『熱中症の悪化にも腸内環境が関連している!』
===============================

 熱中症はどのような仕組みで起こるのでしょうか?


夏も本番。今年は7月の上旬にとても暑い日が続き、多くの方々が熱中症
で運ばれたというニュースを見聞きしました。8月になり、また暑い日が
続くことが予測されています。そんな中、みなさんは熱中症について、原
因や予防、対応策などをご存知でしょうか?

熱中症とは、「高温環境下で、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバ
ランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総
称」です(環境省熱中症保険マニュアルより)。私たちの体には、体温を
調節するメカニズムがあります。人の体温は、皮膚で36.5℃程度、内臓
や血液では37℃程度に調整されています。周囲の気温が上がると体温も
上がるのですが、脳がこの変化をキャッチして皮膚に「汗を出す指令」を
送ります。こうして皮膚から出た汗は、蒸発するときに熱(気化熱)を体
から奪い、体を冷やす仕組みが保たれているのです。

熱中症とは、こうして発汗によって適切に体温を調整する機能がコントロ
ールを失い、体温が急激に上昇してしまう機能障害のことをいいます。実
は、スポーツなどの炎天下だけでなく、室内で過ごしている間にも熱中症
は起こります。高齢の方が室内で熱中症になって倒れているというのも、
近年では珍しいケースではなくなりました。


 熱中症は段階的に対応すべきことが変わってきます!


ひとことで「熱中症」と言えども、重症度には段階があります。大きく分
けると、「体温がまだ上がっていない段階(軽症)」と「体温が上がった
段階(中等症、重症)」です。それでは、まず「体温がまだ上がっていな
い段階」について簡単にご説明いたします。

・熱失神
(症状)高温や直射日光によって血管が拡張し、血圧が下がる。そのため、
めまいがしたり失神したりする。

・熱けいれん
(症状)暑い中での運動や作業中、汗をかくことで水分と一緒に塩分が失
われ、血液中の塩分濃度が低くなる。そのため、脚や腹部の筋肉などに痛
みを伴った筋肉のけいれんが起こる。

このような方を見かけたら、涼しい木陰で休ませ、衣服を緩めるといった
対処が必要です。また、一度に水をかけて冷やすのではなく、霧吹きなど
で水を全身に浴びせて気化熱によって冷やしましょう。脇の下や股など動
脈が集中する部分に缶ジュースや氷枕をあてて冷やすのも効果的です。

汗の量が多い時は、塩分やミネラルが不足しているため、経口保水液など
で補いましょう。ただし、冷たすぎると胃けいれんを起こすことがあるの
で注意が必要です。スポーツドリンクでは塩分濃度が低く糖分も高いため、
市販されている経口保水液をおすすめします。手近なものでは味噌汁や食
塩水(1リットルに1~2gの食塩)が効果的。呼びかけや刺激に応答が無
い場合は、経口で水分を入れるのは危険です。

次に、「体温が上がった段階」についてみていきましょう。

・熱疲労
(症状)大量の発汗に水分や塩分補給が追いつかず、脱水症状になったと
きに発生。皮膚が青白くなり、体温はやや高め。めまい、頭痛、吐き気、
倦怠感を伴う。

・熱射病
(症状)汗をかいておらず、皮膚は赤く熱っぽく、体温は39℃を超える
ことが多い。めまい、吐き気、頭痛、意識障害、錯乱、昏睡、全身けいれ
んなどを伴うことがある。

こうした場合、死に至るケースもあります。特に近年増えているお年寄り
の熱中症は、熱疲労や熱射病といった重篤な場合が多いのが特徴です。汗
が出る「汗腺」が少なくなっているため、汗を出すことができない状態が
続き体温が上がり続けます。大量の汗により体を冷やすことが、若い人た
ちのようにはできないからです。高齢者が猛暑の中、エアコンを付けず室
内にいることは危険です。体温を上げないために、周りの人が環境に配慮
する事が重要なのです。

さらに、特に若い女性に「汗が出ない」人が増えています。運動不足やエ
アコンの効き過ぎた環境にいることで、脳が汗を出す指令を送る機能がう
まく働いていないことが原因です。こうなると、体に熱がたまりやすい体
質になり、過酷な高温環境ではうまく体が冷やせなくなることで、体温が
上がってしまうのです。

 遺伝子や腸内環境も熱中症に関係しているの!?


実は、日本人の20%くらいの人が、熱中症にかかりやすいタイプの遺伝
子を持っていることが分かってきました。

私たちの細胞は、エネルギーを使って機能を維持しています。このエネル
ギーは、ATPという物質として利用されていて、ATPは細胞の中にあるミ
トコンドリアで主に作られています。最近、体温が40℃以上になると、
ミトコンドリアでATPがうまく作られなくなる体質の人がいることが明ら
かにされているのです。つまり、体温が40℃以上にまで上昇した場合、
この体質の人はATPが作られなくなり症状が重症化しやすくなるのです。

まだこの遺伝子タイプを事前に病院で調べる検査法はないようです。しか
し、この遺伝子タイプの人でも体温が40℃以上に上昇しなければ問題は
起こりません。そのため、やはり熱中症は予防が最も大切であるというこ
とになります。

さらに、熱中症が悪化する原因として「腸内細菌毒素」が注目されていま
す。腸内細菌は、悪玉菌が増えていると「腸内細菌毒素」と呼ばれる毒素
を作り出します。激しい運動をしたり、高温環境中では、全身に流れてい
る血液が筋肉や皮膚に集中します。そうすると、いつもは腸に流れている
血液が急激に不足してしまい、腸の透過性が上がってしまいます。つまり、
病原菌や毒素が体内に入り込みやすい状態になるのです。そのため、「腸
内細菌毒素」が熱中症の際に体内に入り込みやすくなり、様々な臓器に障
害を起こしてしまうと考えられています。

高齢の方は悪玉菌が増加しているため、毒素が溜りやすい体質になってい
ます。また、若い方でも便秘が続いていると、毒素が外に出ていくことが
できません。日常的なスポーツの際も、運動をすることで腸の状態は逆に
悪化してしまうことがよくあります。そのため、熱中症の予防とともに、
腸の管理はとても大切なことなのです。年齢を重ねるにつれ、ビフィズス
菌の数は減少します。また、食生活の乱れや不規則な生活も、善玉菌を減
らし、悪玉菌を増やしてしまいます。「腸ケア」をきっかけに、日々の健
康管理、さらには猛暑に対抗できる体作りや準備を心掛けて過ごしましょ
う。