腸内細菌が鉄の吸収を助ける!不足しがちな鉄に要注意

Inscription Fe, ingredients and product containing iron and dietary fiber, natural sources of ferrum, healthy lifestyle, food and nutrition 鉄は、全身に酸素を運んでいます 体の中で作り出すことができずに、食事から補わなければいけないミネラルを「必須ミネラル」と呼び、全部で16種類あります。ミネラルの不足や過剰は、さまざまな不調を招くため、美と健康づくりのために日頃から気をつけなければいけません。なかでも「鉄」は常に不足しがちな栄養素として着目されています。 鉄は、体の中に3~4g含まれていて、たんぱく質と一緒につながって存在しています。 その約70%は血液中にあり、赤血球のヘモグロビンの材料として使われています。また、約4%は、筋肉中のミオグロビンというたんぱく質の構成成分となります。これらの鉄は、肺から取り込んだ酸素を全身に運ぶ大切な役割を果たしていて、「機能鉄」と呼ばれています。 残りの約25%の鉄は、肝臓や脾臓、骨髄にストックされていて、血液中の鉄分が不足した時に使われます。そのため「貯蔵鉄」と呼ばれています。さらに、約0.3%の鉄は、エネルギー代謝に関わる重要な酵素の構成成分となります。
 鉄が不足するとどうなるの!? 上記でもお伝えしたとおり、鉄の大きな役割は体のすみずみに酸素を運び、二酸化炭素を排出する血液中のヘモグロビンを作ることです。そのため、鉄が不足するとヘモグロビンが減ってしまい、体の細胞に酸素を供給できなくなります。

その結果、細胞がエネルギーを作り出せなくなってしまい、疲れやすくなったり、持久力がなくなったりといったいわゆる貧血の状態になってしまいます。 その他にも頭痛や動悸(どうき)、息切れ、食欲不振、便秘といった症状や、やる気がでない、頭が働かない、落ち込みやすいといった脳の酸欠状態による精神的な症状まで出てきて、心身共に、元気がなくなってしまいます。 また、女性にとって大敵であるお肌のくすみももたらしてしまいます。鉄は、美容にも欠かせない大切な栄養素ということです。
 女性は不足しやすいので要注意 日本人が不足している栄養素はいくつかありますが、その中でも心配されているミネラルが鉄です。 1日当たりの推奨量は、男性は7.0~7.5mg、女性は6.0~6.5mgです。厚労省の平成23年度の国民栄養調査の結果では、20歳以上の男性は平均8.1mg、女性は平均7.5mgを摂取していて、推奨量を超えていました。 しかし、不足が心配されているのは、別の側面から見たときです。

それが、月経のある女性です。女性が通常、一度の月経で失う鉄の量は、約25~30mgと言われています。女性1日当たりの推奨量6.0~6.5mgから換算すると、なんと4~5倍もの量に相当しているのです。 そのため、月経時の推奨量は10.5~11.0mgと増えています。その点から見ると、女性の平均摂取量7.5mgでは不足しやすい傾向であることが分かります。 女性は、このように月経によって鉄が不足しやすいことに加え、無理なダイエットや、鉄分の多い肉や魚を控える食生活を送っている方が多いため、鉄が不足している状況はもっと深刻です。近年、30代女性の約10人に1人は貧血(血色素11g/dl以下)で、予備軍も合わせれば、5人に1人は血色素が低値となっています(平成23年度の国民栄養調査)。鉄は、女性にとって特に重要な栄養素なのです。
 鉄の吸収を腸内細菌が助けている! 鉄は多くの生物にとって必須の栄養素ですが、実は自然界には「3価」という形で存在しています。この3価の鉄は水に溶けにくく、そのままでは吸収されにくいことがわかっています。つまり、3価から「2価」という形に変換(還元といいます)することで、水に溶けやすく吸収されやすい形になるのです。 東京工科大学の研究によると、この3価から2価への変換を腸内細菌が行っていることが明らかになっています。 研究チームは、マウスを用いて小腸内に存在している4種類の腸内細菌について、鉄の還元能力を調べています。その結果、大腸菌、酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌のいずれによいても、腸内で3価の鉄を還元し2価の鉄とし、鉄の吸収を助けていることが示されました。 また、2010年にインドの研究チームが発表した内容によると、若い女性で鉄欠乏の人たちでは、糞便中の乳酸菌数が低いことが明らかにされています。このように、鉄を摂取する上でも、善玉菌を摂取したり育てるなど、腸内フローラを適切なバランスに維持することが大切なのです。 
 鉄を摂り過ぎた場合はどうなるの!? 
鉄はもともと体内に吸収されにくい性質があります。また、腸の粘膜にあるフェリチンという貯蔵鉄が鉄の吸収に対する促進や抑制を調節しているため、必要以上に体内に吸収されないようになっています。そのため、普通の食事で鉄を摂り過ぎることは、まずありません。 ただし、サプリメントなどで過剰に摂り続けると、嘔吐(おうと)などの胃腸症状を起こしたり、進行すると肝障害や心不全などの臓器障害を引き起こす危険性が高まる鉄沈着症を起こしたりします。 上記の1日の推奨量を参考にしながら、サプリメントなどで補う時には1日の量を守ってください。 (参考情報) ※1. 東京工科大学 2013年3月 農芸化学会発表プレスリリース ※2. Br. J. Nutr. 104, 931-934 (2010)